マルタ・アルゲリッチ セレブレーション2010

1965年にショパン国際ピアノコンクールで優勝して以来、
波乱万丈の人生を歩んできたアルゲリッチは、
来年70歳!
「音楽の友」誌で、5年に一度行われる読者アンケートの、
「好きな鍵盤楽器奏者」部門で、
アルゲリッチは2006、2001、1996年と、
連続3回で第1位。
その人気ぶりは、独走状態だ。
会場のすみだトリフォニーホールは満席、
有名な芸術家の方々の姿もある。
アルゲリッチがステージに姿を見せるまでの
客席の静まり方には、緊迫感さえ感じられた。
(よくあることだが、前回の東京公演を
アルゲリッチが直前にキャンセルしたことも
関係していたかもしれない。)
指揮者のクリスティアン・アルミンクと共に、
アルゲリッチがステージに現れると、
たちまち会場は熱気に包まれた。
このコンサートは、ショパンシューマンの生誕200年と、
アルゲリッチ初来日(1970年)から40年目を祝うもの。
アルゲリッチの、ショパンの協奏曲を聴くことができて、
本当にラッキー。
まさにショパン・イヤーのおかげだ。
私が聴いた11月28日のプログラムで、
アルゲリッチが演奏したのは、
ショパンのピアノ協奏曲第1番とラヴェルのピアノ協奏曲。
(前回キャンセルした時の曲目が、ラヴェルのピアノ協奏曲
だったので、今回のプログラムに改めて入れられたという。)
さらに、聴衆の熱狂的なスタンディング・オベーションに応え、
アンコールにピアノ・ソロで、
ショパンマズルカハ長調作品24の2を披露。
もう随分長いこと、アルゲリッチはソロでピアノを弾くことから
遠ざかっていたので、とても貴重な経験だった。
コンサートの前半では、時折ハンカチで鼻の辺りを押さえており、
体調が悪そうにも見えたが、
時間の経過と共に、アルゲリッチの演奏は、
ますます輝かしく、自由自在なものとなった。
特にショパンの第2楽章、ピアニシモでの、
羽のようにふわりとした、繊細な柔らかさ。
想像を超える美しさだ。
ショパンの第3楽章や、コンサート後半のラヴェルでは、
躍動感と生命力に溢れていて、
こちらの胸の鼓動も高まり、鳥肌が立った。
音楽の素晴らしさ、楽しさを、皆で分かち合った
かけがえのない、一夜だった。

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Martha Argerich played piano concertos by Chopin and Ravel
at Sumida Triphony Hall.
Her pianissimo was delicate and like a feather.
Her performance was dynamic and full of vitality.