柴田トヨさん著 「百歳」

99歳でデビューした詩人、柴田トヨさんが、
今年の6月26日、100歳を迎えました。
心よりお慶び申し上げます。
この秋、トヨさんの第二詩集、「百歳」が出版されました。
本の帯には、にっこり笑うトヨさんの優しい笑顔。
「さぁ 顔をあげて
   空をみましょう」
この本には、昨年、平成22年の春から
今年の春までの作品が収められています。
有名な「振り込め詐欺犯さんに」も
掲載されています。
犯人に向かって「さん」づけをしたということで、
とても話題になりました。

「今 あなたの
 している事を知ったら
 あなたの家族は
 どう思うかしら
 
 (後略)」

犯人にも良心があると信じ、
率直に語りかけています。
埼玉県警察の、一連の「振り込め詐欺防止ポスター」のための詩は、
あと二つあるようです。
「私だったら〜振り込め詐欺に遭わないための詩」、
そして「貴方に〜振り込め詐欺事件、被害者の方に」。
どれも単なる注意、警告や励ましに留まらない
温かい言葉で綴られています。
先日、相田みつを美術館で、「柴田トヨ展」が行われました。
私はそこで、トヨさんが自作の詩を、
自ら朗読する映像を見ました。
確か、大震災で被災した方々へ向けた詩だったと思います。
トヨさんの祈るような、心を込めた語りかけに、
多くの人が、涙を滲ませていました。

 「あぁ なんという
  ことでしょう
  テレビを見ながら
  唯(ただ) 手をあわすばかりです

  (中略)

  もうすぐ百歳になる私
  天国に行く日も
  近いでしょう
  その時は 陽射しとなり
  そよ風になって
  皆様を応援します
  
  (後略)」

トヨさんの穏やかで芯のある声が、
今も忘れられません。
これは「被災者の皆様に」という詩です。
この本では、もう一つ、
「被災地のあなたへ」も読むことができます。

関東大震災を自ら経験したトヨさん、
大空襲も、両親の死もご主人の死も乗り越えてきた
トヨさんの初めての詩集、
多くの読者の心を打ち、
150万部を超えるベストセラーとなった
「くじけないで」。
今年の春、
書店で平積みになっていたこの本を、
私は、ふと手にしました。
パステルか色鉛筆で、ふんわりと
ピンク、オレンジ、黄色で彩った表紙。
とても心を惹かれ、1冊買い、
ぽかぽかと温かい気持ちで、家に帰りました。
この本を購入した翌日、
東日本大震災が起こり、
本当に悲しい、大変なことになってしまいました。
私は、祈る気持ちで、
「くじけないで」のページを開きました。
大震災から4日後の3月15日、
このブログで、本をご紹介しました。
今回は、「くじけないで」と「百歳」を、
2冊続けて読みました。
陽射しやそよ風や、
澄んだ空、こおろぎの声を感じながら・・・