野口智雄さん著 「マトリックス・マーケティング」

本書には「水平思考で市場をつくる」というサブタイトルがついている。
水平思考として、野口さんは
「代用、結合、逆転、除去、強調、並べ替え、追加、融合、応用」という
9つの思考方法を挙げている。
そしてそれぞれの思考方法が、どのように
最近のヒット商品で使われているかということを、
ソフトバンクのCMの白い犬、AKB48、ワコールの「クロスウォーカー」、
サントリーのノンアルコール・糖質ゼロ飲料「オールフリー」など、
具体例に基づいて説明する。
野口さんは、「はじめに」の中で、次のように述べている。

“今の世の中、もはや景気後退といった単純な「不況」のレベルを超え、
 国家経済の機能不全すら起こりかねない深刻な状態に突入しているといえる。
 このような「厳冬」の環境下で企業や個人がサバイバルしていくには、
 従来型の思考法(垂直思考)や行動では不可能である。
 古い慣習や常識、あるいは古色蒼然とした成功方程式はあえて打破し、
 根本から発想や行動を転換していかなければならない。”
例えば、ソフトバンクの犬では、「逆転」という方法が用いられているという。
”その構成は、娘役のアヤ(上戸彩)から見て頑固で昔気質風のお父さんが
 人間ではなく「犬」であったり、
 兄が外国人であったりと奇想天外なものである。”
”そして、何とも不思議なのは、
 父は自分が「犬」に変えられてしまった事実に対して特段悩むわけでもなく、
 常に昔風の「人間の父」としての威厳を保ち、平静であるところだ。
 この父の心情にも「逆転」の味がある。”
このようにヒット作や、視聴者、消費者が面白いと注目するものについて、
そのヒットの理由を、要素に分解して述べており、読んでいて、とても興味深い。
今後のコンテンツの制作に、このような思考方法が取り入れられる日が来る、
かもしれない。