加藤諦三さん著 「まじめさが報われるための心理学」

学生の頃だっただろうか、加藤諦三さんの本を
次々に読んだ時期があった。
当時とは状況も心境も変化したが、
加藤さんの本を偶然、図書館の書棚で見つけ、久しぶりに読んでみたら、
いろいろな気づきを得ることができた。
はしがきの中で、加藤さんは述べる。
”この本は第一のタイプの人、つまり「自ら苦しむ人で、
 間違った教えを受けて苦業する」人に向けた本である。
 (中略)
 私達は、自分が自分を憎んでいることを
 他人を憎むことを通して体験する。
 (中略)
 自分が原因の問題を
 周囲の人間の問題であると責任転嫁をすると、
 最後には事故消滅していくしかない。
 体の調子が悪くなるばかりではない。
 いつも焦って生きていたり、
 虚無感に苦しめられる。
 逆に自己イメージが改善されれば、
 シーベリーが言うところの
 〔戦う楽観主義者〕になれる”。
本書は「自分と向き合わないことが悲劇を生む」から始まり、
「あなたはあなたの望むものになれる」で締めくくられる。
「実行力がなくていつも恨みがましく文句を言いながら生活、(中略)
 あれをしたいこれをしたいと口だけで言うが、
 実際には決して行動を起こさない人」が、
どのように自分に向き合い、人に接すれば、
より良い人生を送ることができるか、という道筋を示唆する。
著者自身の体験を紹介する
”失敗したらまず「よかった」と思え”は、特に興味深い。
加藤さんは、アメリカで生活を始めようとした時、
現地の不動産業者にだまされた。
それがきっかけで、悪徳弁護士にもカモにされ、
さらに息子さんの手術では、悪徳医師のせいで、
大きな危険にさらされた。
加藤さんは当初、「どうして私だけがこんなひどい人間にばかり
出会うのだ」と嘆いたが、やがて、
「しかしよく考えてみると、やはり私の態度に問題はあった。
 (中略)
 同情を求めるのではなく、毅然として戦う姿勢があったら、
 その弁護士はおそらく私とはかかわらずに
 他の鴨をさがしていたかもしれない」と気づく。
「これは私がアメリカで本格的に仕事をしていくための研修期間だ」、
「貴重な体験、準備期間、研修期間」だった、と
考えるに至ったのである。
加藤さんは、巨額の損失を被りながらも、
アメリカで沢山の詐欺師に遭って「よかった」”と振り返る。
この危機を乗り越えた加藤さんは、
ハーバード大学の研究員を4回も務め、
優れた業績を収めることができた。
「安逸を求める人間にとってはトラブルは呪い」であると
加藤さんは述べる。
失敗しても、後に振り返って「よかった」と思うことができるよう、
新しい挑戦を続けていこう。