力強く床を踏み鳴らし、
真紅のドレスをまとい踊る、サラ・バラス。
しなやかな身体から繰り出される
動きの一瞬一瞬は、まぶしいほど鮮やかだ。
カルロス・サウラ監督は述べる。
「台本は3〜4ページしかなく、
選んだ演目とアーティスト名が列記してあるだけだからだ。
(中略)
撮影時に感じる刺激と楽しさが、
この種の作品によって引き出される
即興力に基づいているからだ」。
(プログラム「監督ノート」より)
この映画は、「音楽に乗って人間の一生を巡る生命の旅」
という要素を有するが、
21曲のそれぞれには独立性があり、
踊り手、歌い手、ギタリストたちの個性が際立たせられている。
にじむような色彩の背景に幻想的な印象を、
また、踊り手に陰影に富む表情を与えるのは、
「光の魔術師」、ヴィットリオ・ストラーロ。
ストラーロは、アカデミー賞撮影賞を
3度受賞しているとのことだが、
この作品で、人物、踊り、音楽、色彩、光、というものを、
理想的な姿に結び合わせている。
映画だからこそ成し得た世界に、
導かれる思いがする。