アカデミー賞5部門受賞! 白黒・無声映画「アーティスト」

映画館で見かけた、主人公男女の白黒写真。
女性のヘアスタイルや眉の形、
男性の燕尾服やひげの形から、
昔の映画のリマスター版だと思っていた。
けれど、アカデミー賞を5部門も獲得した
「アーティスト」という往年の名画?には、
心当たりがなかった。
それもそのはず、これは2011年に製作された
21世紀生まれの白黒・無声映画だったのだ。
セリフをしゃべらない登場人物たちが、
雄弁にストーリーを語ることができるのは、
目の動き、様々なニュアンスの笑み、立ち居振る舞いが、
直接、こちらの感覚に訴えてくるからだろう。
そして、それぞれの人物の体格や姿勢、歩き方も、
人格や信条、心の内を投影するからではないか。
特に、でっぷりと太って葉巻をくわえた映画会社の社長と、
ひょろりと背が高く、いかにも誠実そうなお抱え運転手は、
あまりにもはまり役で、
無声映画ならではの、コミカルな存在感が光っていた。
また、「言葉」というものを、そもそも持たない様々なしかけが、
この映画で大きな役割を果たしていると思う。
それは、音楽、ダンス、犬(主人公ジョージの愛犬)だ。
(表情豊かで芸達者なこの犬は、今作品で、金の首輪賞
最優秀俳優犬賞をみごと受賞したという)。
ラストシーンの主人公たちのタップダンス。
明るく歯切れのよい音楽、タップダンスの軽やかな動き、
主人公たちの息の合った様、輝く笑顔が相まって、
「希望」、人が生きていくために大切な希望というものを、
はっきりと私たちに見せてくれる。
そして、靴が鳴らす鮮やかなリズムの音たちの、
何という楽しさ!
おっと、あぶないあぶない・・・この辺で。
(感動的なラストシーンでは、誰もが
人間の視覚、聴覚のすばらしさを再認識するでしょう!)