枕草子 朗読講座 第2回

「声よりも息づかいや間に、”その人”が現れます。
 朗読のうまい人は、間の取り方がうまい。
 息は目に見えないけれど、大切なのです。」


NHK文化センター青山教室。
加賀美幸子さんの「枕草子」朗読講座の2回目です。


加賀美さんが作成した本日分のプリント2枚目後半。
「ここは、音楽的な響きのあるところです。
 声に出して読むとおもしろいですね。
 それでは吉田さん、どうぞ」


  橋はあさむつの橋。長柄(ながら)の橋。あまびこの橋。浜名の橋。
  一つ橋。うたたねの橋。佐野の舟橋。堀江の橋。
  かささぎの橋。山すげの橋。をつの浮橋。
  一すぢ渡したる棚橋、心せばけれど、
  名を聞くにをかしきなり。
  (清少納言 「枕草子」 第六十四段)


指名され、私は様々な橋の登場する段、
清少納言が「名を聞くにをかしきなり」と結んでいる段を読みました。


「音楽的な響きですね。
 吉田さんは、どう思いますか?」
初めて目にする文章ですので、わからない言葉もあったのですが、
「響き」について、とっさにひらめいたことがありました。


「あさむつ、長柄、あまびこ、浜名、と
 ア段で始まる橋を、四つ並べて始めています。
 これは、清少納言のすぐれたセンスで無意識のうちにしたことなのか、
 よく考えてこのようにしたのか、
 どちらなのかしら? と思いました」。


このように私が答えると、加賀美さんは「あさむつの橋、長柄の橋・・・」と声に出し、
「本当ね! 」と、にっこりしたので、私はほっとしました。


このブログを読んでいる皆さま、ちょっとお声に出して、読んでみてください。
「あさ(むつ)、ながら、あま(びこ)、はまな」と、
ア段の音が、たくさん規則的に出てきます。
そして、橋の名は、四文字、三文字、四文字、三文字、と
リズムよく並んでいます。
この部分、清少納言は、吟味に吟味を重ねたのでしょうか?
それとも、さりげなく書きつづったのでしょうか?!



講座終了後、加賀美さんとお話しする機会がありました。
加賀美さんは、ここ青山では「枕草子」朗読ですが、
練馬光が丘では近代詩朗読を担当しています。
私が青山を選んだ理由について、
「古典をひとりで読むのは孤独です。
 詩はひとりで読むのも良いですが、『枕草子』は皆で読みたい。
 皆で読むと楽しいと思いまして・・・」
と申し上げると、加賀美さんは「そうね」と、うなずきました。


新しいことを始める時、場がある、仲間がいる、そして良い師匠がいる、というのは、
とても楽しく、元気づけられるものです。
いつの間にか、遠くまで歩んで行かれるのではないかと思います。