オペラ「エフゲニー・オネーギン」 (チャイコフスキー作曲)

レニングラード国立歌劇場オペラの
「エフゲニー・オネーギン」を観た。
ロシアの作曲家チャイコフスキー(1840〜1893)の、
38歳の時の作品。
原作はロシアの詩人プーシキン(1799〜1837)の
同名の小説だ。
19世紀初めの雪深いロシアを思わせる、
青を基調とした舞台。
タチヤーナは、読書の好きな夢想的な娘。
妹オリガの婚約者レンスキーが連れて来た
ヒルな青年、エフゲニー・オネーギンに
一目ぼれをしてしまう。
夜を徹して手紙をしたためるタチヤーナ。
ところがオネーギンは、冷ややかに、
自分は結婚には向かない男だと言い、
さらにタチヤーナに、自粛しなさいと
説教をする。
悲しさ、恥ずかしさで走り去るタチヤーナ。
タチヤーナの命名日、オネーギンは
舞踏会でオリガを踊りに誘い、
レンスキーを嫉妬させる。
怒りのあまり、オネーギンに
決闘を申し込むレンスキー。
だが、撃たれて死んだのは、レンスキーの方だった。
その後、放浪の旅を続け帰国したオネーギンは、
公爵夫人となったタチヤーナに再会する。
オネーギンに向かって公爵は、
タチヤーナと結ばれて
どれほど幸せになったか、聞かせる。
美しいタチヤーナに夢中になったオネーギンは、
情熱的に求愛する・・・。
タチヤーナ役のアンナ・ネチャーエワは、
各幕ごとの、成長を遂げていくタチヤーナを演じ分け、
さらに、それぞれの場での、揺れ動く心のありようを
ていねいに表現していた。
チャイコフスキーの陰影のあるメロディーに乗せて歌う
ネチャーエワの透き通る声は、情感に溢れていた。
それにしても、真実の愛とは何だろう。
公爵夫人となったタチヤーナが、遂に告白した言葉、
「今でも、あなたを愛しています」。
かつて心を通わせたことさえなかったオネーギンは、
彼女にとって、どういう存在であり続けたのか。
幻の理想像だったのか。
どんな事件が彼女を苦しめようとも、
彼女自身が成長し、結婚して身分が変わろうとも、
それでもその幻は、心の中に棲み続けていたのか。
決断し、自分の人生を選び取るタチヤーナ。
彼女の秘めた思いを雪が閉ざし、
何事もなかったかのように、
純白の世界の中に包んでいくのだろうか。