茂木健一郎×宮本亜門 対談「ミューズがここに降りてくる!」

脳科学者の茂木さんと、演出家の宮本さんの
対談を聞いた。
職業(や、見た目の雰囲気)は違っても、
人間を探求することは、お二人とも同じ。
対談は盛り上がり、
何度も笑いが湧き起こった。
宮本さんは、酷評された作品に興味があると言う。
役者でも、自分がボタンを押したら
変わりそうだと思う人に、興味があるそうだ。
役者のセリフや心が、どうキャッチボールするのか、
それが大切であり、
舞台も自由でなければならない、と言う。
また、宮本さんは、引きこもりも自殺未遂も
少年時代に経験した。
それらは今では、武器となっているそうだ。

 「ものすごく落ち込んだり、
 ワーッとなっても、
 待てよ、これって面白いんじゃないか、
 と気づくんです」

という言葉も印象的だ。
一方、茂木さんは、

 「宮本さん、パッション(情熱)ありますね!」

と勢いよく言ったら逆に、

 「茂木さんの方が、パッションありますよ。
 落ち着きのないパッションがありますね。
 子供の頃からそうなんですか?」

と切り返された。
スーツにネクタイ姿で、背筋を伸ばしている宮本さん。
いつものセーター姿で、手を振り回し、
身体を揺すっている茂木さん。
宮本さんのスルドい指摘で、
会場は笑いに包まれた。
茂木さんは、自分は多動症だったと答えた。

 「ぼく、ずっと踊っていたいんです。
 研究している時も、こうして対談している時も。
 理屈を言う人とは、踊れない。
 学会で議論していても、
 魂の友が相手なら、
 踊っているみたいになるんです」

理屈を言う人とは、踊れない。
人の行動は、理屈からは生まれず、
理屈を重ねても、物語を創ることはできない。
感情が、人を動かす。
その積み重ねが、ストーリーとなる。
舞台でストーリーを創ろうとする宮本さんと、
人間の織りなすストーリーを解明しようとする茂木さんの、
本音のぶつかるトークだった。