オペラ 「カルメン」 (ビゼー作曲)

ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で、
1月16日に上演された新演出「カルメン」の映像を、
「METライブビューイング」で観た。
カルメン役のエリーナ・ガランチャ
「アザだらけになった」と述べた
体当たりの歌や演技が、大画面で迫ってくる。
ビゼーは、1838年生まれのフランスの作曲家。
カルメン初演のわずか3ヵ月後、
何と36歳という若さで亡くなった。
病死ではあるが、カルメン初演の失敗が、
死期を早めたのではないかという俗説がある。
カルメン初演の失敗は、
内容があまりにも不道徳、という理由。
そもそも、ビゼーがメリメの小説「カルメン」を
オペラ化すると提案しただけで、
パリのオペラ・コミック座の監督の一人が辞職したという、
そんな時代だ。
上演にこぎつけるため、原作の毒を
かなり和らげた、ということだったのだが・・・。
19世紀初め頃のスペインが舞台。
純朴な兵士ドン・ホセには、故郷に婚約者と老いた母がいたが、
ジプシー女カルメンに、一輪の花を投げつけられる。
カルメンに惹きつけられ、ホセは脱走兵となり、
密輸団に加わり犯罪に手を染め、
故郷も婚約者も母も捨てた。
が、カルメンは、花形闘牛士に心を移してしまう。
ホセはカルメンに、「遠い場所でふたりで新しい生活を始めよう、
俺はお前を救い、お前に救われたいんだ」と願うが、
カルメンは、「あんたとの仲は終わったの、
私は譲らない、自由に生まれて自由に死ぬのさ、
死なんか怖くない」と答える。
ホセの「俺についてこい」という言葉にカルメンは、
「それなら私を刺すのね。さもなきゃ通して」と返し、
ホセからもらった指輪を抜いて、投げつける。
ホセはカルメンをひと突きにし、
「俺が殺した、愛しいカルメン!」と
悲痛な声を上げる。
カルメンの死は様々に描かれるが、
このリチャード・エアの演出では、
ホセがカルメンを抱きかかえ、
捨てられた指輪を、息絶えたカルメンの指に再びはめる。
すると舞台がぐるりと回る。
今、まさに倒された牛と、剣を手にした闘牛士が、
凍りついたように静止している。
時が止まり、そのまま世界が終わったかのように・・・。
時代は変わり現代では、カルメンは自分の信念の通りに生き
自由を貫いた女、と描かれることも多い。
また、ホセへの要求をどんどんエスカレートさせたカルメンは、
ホセの愛を最後まで求め、試していたのではないか、
「私を刺すのね!」と言い放ったカルメンは、実は、
ホセによって、殺されることを望んだのではないか、
という見方をする人もいる。
今回の上演では、カルメン役のエリーナ・ガランチャが、
情熱的で迫力ある歌声を聴かせた。
歌い踊るシーンは特に魅力的で、
まさにジプシーといった野性味に溢れている。
今回ご紹介するDVDは、まず、1987年、
メトロポリタン歌劇場でのライブ収録。
アグネス・バルツァ(カルメン)、
ホセ・カレーラス(ドン・ホセ)、
指揮ジェームズ・レヴァイン
次に、1978年、
ウィーン国立歌劇場でのライブ収録。
エレーナ・オブラスツォワ(カルメン)、
プラシド・ドミンゴ(ドン・ホセ)、
指揮カルロス・クライバー
演出フランコ・ゼッフィレッリ
3大テノールの聴き比べも楽しいが、
何と言ってもカルメン役のこの二人が凄い。

http://www.amazon.co.jp/dp/B000087EM1

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METライブビューイング:オペラ | 松竹