没後400年 特別展「長谷川等伯」

長谷川等伯の特別展が、
上野の東京国立博物館 平成館で
行われている。
国内に存在する、ほぼ全ての等伯作品が、
一挙公開されるという。
国宝が3件、重要文化財が約30件。
ひとりの絵師として、何というスケールの大きい
創造を成し遂げたことか。
1539年に能登に生まれた等伯は、
「仏涅槃図」や「日蓮聖人像」などの
仏教関連の題材を描いていた。
30代で家族と共に京都に向かうが、
持っていたのは、筆のみだったという。
苦労して人脈を築き、
京都の「大徳寺三門壁画」などを手がけた後、
遂に、時の権力者、豊臣秀吉からの依頼を受ける。
3才という幼さで亡くなった秀吉の愛児、鶴松を
弔うため建立した祥雲寺(現・智積院)に
金碧画を描いたのだ。
1592年、等伯は52才であった。
秀吉のために描いた金碧画、
国宝「楓図壁貼付」と
同じく国宝「松に秋草図屏風」は、
まさに、等伯が渾身の力を込めて
描き上げたものであろう。
豪華な金の地に、楓、松それぞれの
どっしりと太い幹が、斜めに伸びる。
大胆豪快な構図だ。
楓の枝には、散りばめたように、
一枚一枚繊細に描かれた、楓の葉。
紅く染まったもの、まだ青いもの、
微妙な色合いのもの、
様々な色に、丁寧に塗り分けられている。
風にそよぐ葉の擦れる音が、
さらさらと聞こえてきそうだ。
松の方では、堂々と伸ばした枝に、
菊をはじめとする花々が、
すっぽり包まれるように
咲いている。
花がとても可憐で、
力強い松と、対比を成している。
そして等伯の最も有名な作品、
国宝「松林図屏風」。
音楽にたとえるなら、
静寂を破って、尺八の音(ね)が響くような、
その音は、かすれたりふるえたりして、
一瞬一瞬、刻々と表情を変えていき、
そして、またいつの間にか
元の静寂に戻っていくような、
そのような感じであろうか。
この展覧会は3月22日まで。

東京国立博物館