グザヴィエ・ドゥ・メストレのハープを聴いて

パリ生まれのベルトラン・ドゥ・ビリー指揮、
ウィーン放送交響楽団の演奏会に、
友だちのユカちゃんと出かけた。
スペイン、フランスものが並ぶBプログラム。
ロドリーゴ作曲の「アランフェス協奏曲」(ハープ版)を、
フランス出身のグザヴィエ・ドゥ・メストレが演奏。
メストレは、若くしてウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ソロ・ハープ奏者となった実力派だ。
「アランフェス協奏曲」は、1939年、
ギターと管弦楽のために書かれた。
作曲者のロドリーゴ(1901〜99)は、スペイン人。
幼い頃、ジフテリアにかかり、
失明するというハンディを負うが、
ピアノと作曲を学び、パリに2度留学。
スペイン内戦(1936〜39)の時は、ドイツで過ごし、
内戦終了後に帰国して、マドリードに定住。
1940年、この「アランフェス協奏曲」を発表して、
一躍、名声を得た。
アランフェスとは、スペインにある離宮のひとつで、
美しい庭園がある。
この協奏曲では、第2楽章の哀愁を帯びたメロディーが
特に有名だ。
メストレは、ハープを豊かに響かせ、
メロディーを存分に歌わせる。
また、すばらしいテクニックで、速いパッセージを
華麗に駆け巡るように演奏した。
ハーピストが自由自在に楽器をかき鳴らすのを見て、
ハープの演奏を、優雅なイメージで
とらえる人も多いだろう。
が、見ると弾くとでは大違い。
私は、大学1年の時、副科でハープを受講した。
ハープの弦は、ギターの弦より、
ずっと太く、長い。
初心者の私は、弦と弦の間に、
何本かの指を差し入れ、
「エイッ!」とばかりに
ぐっ!と指を動かす。
ボンッ!と音が響く。
力強くすばやく指を動かし、
直ちに指、手、腕の力を抜く。
良い音が響くと嬉しいが、
そっとはじいた程度では、音が出ない。
また、音を変える時には、足元のペダルを踏むのだが、
このペダルが7個もある。
演奏する姿は、一見優雅そうに見えても、
実は、てきぱきと、ペダルを踏みかえているのだ。
メストレの華麗な演奏は、私には魔法のよう。
同じクラスの仲良し3人で受講したハープ。
放課後などに、学校のハープを借りて、
交代で練習したっけ。
あの新入生の頃が、なつかしい。