吉村作治先生著 「ピラミッドの謎」

砂漠にそびえ立つ巨大なピラミッド。
黄金のツタンカーメンのミイラマスク。
古代という時代に、このような建造物や美しい工芸品を、
どうやって作ったのか。
この本は、謎に満ちたエジプト文明について、
写真や年表、地図などたくさんの資料で、
わかりやすく説明してくれる。
2005年、吉村先生は「セヌウ」というミイラを発見した。
これは、未盗掘完全ミイラだ。
先生は語る。
エジプト考古学者にとって、未盗掘の墓を見つけることは、
 生涯の夢であり、一生かけてもなかなか発見できるものでは
 ありません」。
その奇跡的な発見、発掘現場の状況は、
10枚以上の写真入りで、詳しく書かれているが、
現場の期待、不安、興奮が伝わってきて、
読んでいる私まで、どきどきする。
広大な砂漠の中で、見つかるのかもわからない墓を探す。
吉村先生の発掘活動は、40年を超えるそうだが、
何という不屈の精神であろう。
特に興味深いのは、「ピラミッド建造法の謎を解く」という項。
ピラミッドを構成する石は、1個3トンもするという。
それをどうやって切り、運び、積んだのか?
謎を解くため、何と先生は、実際にミニ・ピラミッドを作った。
人々が大きな石を切り出しているところ、
人々が石を積み上げているところも、
写真で紹介されている。
何とスケールの大きい、想像を絶する実験だろう。
遙か昔の、遙かに遠い、古代エジプトの世界。
現地に赴き、その謎に迫ろうとする先生の情熱には、
深く心を動かされる。
一生を懸けて物事に取り組むとは、どういうことか。
そのような生き方を教えてくれる本だ。