茂木健一郎×上野川修一 対談「脳と腸 -腸は第二の脳?」

脳科学者の茂木健一郎さんと、農学博士で東京大学名誉教授の
上野川修一さんとの対談が行われた。
上野川さんには、「免疫と腸内細菌」、
「人間は考える腸である」、
「人生は運命でなく『腸』が決定する」など、
一般向けにも多数の著書がある。
とても気さくな方で、腸や菌、健康作りについて、
沢山の話をしてくれた。
特に心に残った言葉は、
「チョイ悪な菌が入ることで、
 免疫系は活性化するんですよ」。
致命的でなければ、菌と共生することで、
健康を保つことができると言う。
無菌過ぎると、バランスが崩れる。
きれいすぎる状態で育つと、アレルギーになりやすくなる。
上野川さんは子供時代、下町に育ち、
汚いところで、汚いものを食べ、
鼻はたらしっぱなしで、不潔だったそうだ。
けれども、「それが良かったと言える」と、
ニコニコ話すのを聞いて、
「手を除菌!」に慣らされてしまった私は、
やはり、少なからず驚いた。
健康を保つ食事法などを、
たくさん紹介してくれた上野川さんだが、
対談も終盤に差しかかった頃
「実際の日常では、体に良いか悪いか、
 あまり気にしていないんですよ。
 健康については、100%女房任せ。
 あとは、おいしいものがいい」
と、素顔をちらりと垣間見せた。
そばなどのおいしいお店を沢山知っていて、
実は、そういう本も出したいのだそうだ。
とは言っても、以前、NHKの番組出演のため、
一週間分の上野川家の朝食が収録された際、
奥さまの作った朝の野菜ジュースを、
全部飲むことのできた人は、
誰もいなかったそうだ。
上野川さんならでの最新情報紹介によると、
ある腸内細菌が多くなると、人間でもネズミでも肥満になる、
という研究発表が、科学雑誌に掲載されたそうだ。
おなか周りが気になる茂木さんも、
この話に興味をもったが、
まだ肥満対策が講じられるほどには、
研究は進んでいないようだ。
上野川さんによると、腸は脳から独立し、
脳から指令を受けずに働く。
逆に、腸が脳をコントロールしている側面もあるのでは、
とのことだ。
腸の免疫系は、善悪を見分けているという。
生まれてからずっと、見えないところで、
活動を続けている腸。
その働きをもっと良く知ることで、
健康のレベルを、かなり向上させることができそうだ。