羽生善治さん著 「決断力」

20代半ばで、将棋界始まって以来の七冠を達成した、
棋士羽生善治さん。
勝負の世界に生きる羽生さんは、
今なお、試行錯誤を重ね、さらなる努力を続けている。
羽生さんの肉声が聞こえてくるようなこの本には、
力強い、生きるヒントがたくさんあった。
特に印象に残ったのは、次の言葉だ。
「環境が整っていないことは、
 逆説的にいえば、非常にいい環境だといえる。(中略)
 リスクの大きさはその価値を表しているのだと思えば、
 それだけやりがいが大きい」。
成功した人は環境に恵まれたのだろう、とか、
逆境の中で成功をつかんだ人に対して、
負けずによくがんばった、と、私たちは思いがちだが、
羽生さんの考えは、まったく違うようだ。
「リスクを避けていては、その対戦に勝ったとしても
 いい将棋は残すことはできない。
 次のステップにもならない。
 それこそ、私にとっては大いなるリスクである。
 いい結果は生まれない。
 私は、積極的にリスクを負うことは
 未来のリスクを最小限にすると、
 いつも自分に言い聞かせている」。
毎年、何か新しいことにチャレンジすることを、
私も心がけている。
今年は、日本武道館で演奏される年末の「第九」に、
合唱団のひとりとして参加することを決めた。
先日、楽譜を購入。
早速、ソプラノパートを歌ってみた。
わかっていたこととはいえ、
今まで出したこともない高音がある。
もちろん、全体的に非常に高い音ばかりだ。
声を出すだけでも大変そうだが、
これにドイツ語の歌詞をのせなければならない。
必死に声を出すだけに留まらず、
できればべートーヴェンの魂というものを、
感じながら歌いたい。
それは、なんと遙かな道のりであろう・・・。
といっても、本番は4ヵ月後なのだが。
今までは客席で聴いていた「第九」を、
今年は、自ら声を出して歌う。
私はどのように声を出し、
どんな気持ちで歌うのだろう。
世界が変わって見えるようになるのだろうか。
昨日、電車の中で読み終えた「決断力」。
「勝負では、自分から危険なところに
 踏み込む勇気が必要である」
と、羽生さんは語る。
「将棋にかぎらず、知らないフィールドで
 戦う方が面白いのではないか。
 常識もマニュアルも通用しない
 カーナビが効かない場所では、
 自分の力を試されているようでもあり、
 充実感を実感できるはずだ。
 未知の世界に踏み込み、自力で考え、
 新しいルートを探し求める気迫こそ、
 未来を切り開く力になると私は考えている」。
「第九」を歌うために、これから何をすればいいだろう。
発声練習、ドイツ語の単語の意味調べ、
発音の練習、メロディーを歌う練習・・・。
けれども、それをひとつひとつこなすだけでは、
納得のいく歌にはならないだろう。
どうしたらいいのか、
今、全てわかっているわけではないが、
練習が進むうちに、
だんだん道が見えてくるような気がする。
4ヵ月後、自分がどのような心境にあるか、
またこのブログで、お伝えしたいと思う。