横山幸雄さんのショパンシリーズ第3回

横山さんが毎年9月に行ってきた
東京オペラシティショパンシリーズ。
「若き晩年 天国への扉の前で」という副題のつく
この第3回が、最終回だ。
ショパン生誕200年を迎える今年に、
この最終回が来るようにしたという。
また、横山さんは今年、ショパンが亡くなった
39歳という年齢になった。
今年の秋からは、12回にも及ぶ
プレイエルによるショパンピアノ独奏曲全曲演奏会」を始める。
「デビューしたころは
ショパンの作品を弾いている』という
感覚がありましたが、
今では自分自身で書いた作品以上に、
完全にショパンの全作品が
自分の体にしみこんでいる気がしています」
と、横山さんは述べる。
コンサート開始。
光沢のあるグレーの細身のスーツで現れ、
いきなり、情熱がほとばしるような
「幻想曲」を聴かせてくれる。
この曲でコンサートが終わるかのように、盛り上がる。
が、バキッとピアノの弦の切れる音が響いた。
横山さんは構わず弾き続け、一曲終わったところで、
大きな拍手に包まれ、舞台の袖に消えた。
そして、マイクを手に、再び登場。
20年近く演奏活動をしてきて、
舞台上で弦が切れたことは、ほとんどなかったのに、
今年はこれで二回目だ、とのことだ。
弦が張り替えられる間、横山さんの話は続き、
会場からは笑い声も起こって、
一時、なごやかな雰囲気になった。
今回のプログラムでは、「子守歌」と「舟歌」が、
続けて演奏された。
柔らかい光を秘めてきらめく音の流れに包まれ、
天の上にいるかのような幸せを感じ、
そして次に、人生における喜怒哀楽を振り返るような
深みのある豊かな響きに身を委ね、
ショパンの心情に、思いを馳せる。
ショパンが音楽で語ろうとした様々な感情を、
横山さんや聴衆の方たちと、共にするひとときであった。