甲野善紀さん「身体革命 武術からの気づき」講座

松聲館館主で武術研究者の甲野善紀さんの
「身体革命 武術からの気づき」という講座が、
朝日カルチャーセンターで行われた。
甲野さんには解剖学者の養老孟司さん、
精神科医名越康文さんなど、
様々な分野の方との共著があるが、
話がとても深くて面白い。
この講座は、以前から年に数回行われており、
興味はあったのだが、なかなか日程が合わず、
今回ようやく受講することができた。
申し込みの電話をすると、担当者の方から、
「先生のお相手をしていただけますか?」と聞かれた。
ちょっと興味がわいたが、技をかけられても、
うまく”投げられる”自信がなかったので、
「初めてなので、今回は見ているだけにします」と答えた。
マットの周囲に受講者が集まる、と聞き、
こぢんまりしたスペースで、アットホームな雰囲気で・・・、
と想像した。
が、実際には、100人以上入る大教室の机も椅子も全て撤去、
床一面に、マットが敷き詰められていた。
大勢の受講者が、幾重にも輪になって甲野さんを取り巻き、
その輪は見る見るうちに小さくなり、沢山の質問も飛び交う。
とても熱気に溢れていた。
若い男性や会社員も多かったが、
年配のご夫婦なども目立った。
甲野さんの技や考え方は、介護に役立つからなのだろう。
寝ている人や、倒れてすがりついてくる人を、
どうやって助け起こすか、という実演もあった。
私が特に興味を持ったのは、
フルートや、ヴァイオリンを構えて演奏を始める際、
その最初の一音を奏でる瞬間から、スムーズに指を動かすには、
どのようなことに注意して構えたらよいかという方法、
歩くときに、楽に足を踏み出し続ける方法、
心を落ち着かせて安定させる方法、などである。
歩く時のヒントを、次の登山の時に
こっそり試してみようと思う。
甲野さんは切れた電球を取り替えるなど日常生活の中で、
”もっとよい身体の使い方”が閃くのだそうだ。
刀剣の振り方、その際の身のこなしについても、
還暦を過ぎた今もなお、新たなアイデアが浮かぶという。
車や家電製品などに頼る現代の生活では、
知らず知らず身体を動かすバリエーションが減る。
自分の身体の、それぞれの部分の特性を知らずに、
今までどれほど非効率なことをしたり、
痛みなどを起こしてきたことか。
また、自分や相手の体重や動きを利用すると、
どれほど楽に、大きな力を使って、
いろいろなことができることか。
自分の身体の内なる声に耳を澄まし、
身体やその動かし方を、普段からもっと意識していこう。