「白洲正子 神と仏、自然への祈り」展

桜の名所として知られる砧公園にたたずむ世田谷美術館で、
白洲正子 神と仏、自然への祈り」と題する展覧会が行われている。
大きなスクリーンには、歩みを進める正子さんの視点で撮影された、
山々や滝などの映像。
自分が、旅する正子さんに成り代わった感覚を味わう。
どのような風景を目の当たりにして、
どのように正子さんが感じたのかを、追体験する。
そして仏像、能面、屏風、扇・・・。
正子さんが著書の中で紹介したもの、愛でたものが、
自然信仰、かみさま、西国巡礼、かくれ里など、
10のテーマに分けられて、展示されている。
有名な、国宝「明恵上人樹上座禅像」を始め、
国宝や重要文化財がたくさんあり、とても見ごたえがある。
自然信仰のコーナーにある、重要文化財「日月山水図屏風」は、
16世紀、室町時代の作品で、大阪の金剛寺に所蔵されているもの。
心が洗われ、清らかになるような作品だ。
右隻の山々の並び、山桜や松、日輪、
左隻の雪山、三日月。
打ち寄せる波。
日本人が心に描く風景を、凝縮しているように感じられる。
世界遺産である京都の平等院に所蔵される、
国宝「雲中供養菩薩像(北1号)」。
雲の形がとても優美で、まるで花のようだ。
仏さまが雲に乗っているとは、なんだかほほえましい。
膝に乗せた琴(きん)を奏でる指が、
とてもしなやかで、美しくなめらかな動きが感じられる。
平等院鳳凰堂に、このような「雲中供養菩薩像」が
52体も壁にかかっているという。
音楽を奏でる菩薩、舞う菩薩・・・。
楽器は琵琶、琴、笛、笙、鼓、太鼓など、様々だとのこと。
北1号だけでなく、ずらりと52体揃ったところを、
私も目の当たりにしたいものだ。
正子さんが日本の美に深く深く分け入った足跡(そくせき)を辿るうち、
私も、私自身の次のテーマを探したくなった。