「あなたへ」、「未来信じて」のレコーディング

3月11日の大震災から5日後の、3月16日(水)夜のこと。
友人と電話をしている時、
「東北の人々を励ます歌を作って、YouTubeに公開したら? 」
というアドバイスをもらいました。
それを聞いて私はすぐ、その歌を収録したCDを制作し、
売上金を寄付することを考えました。
たくさんの歌を収録しようと思い、早速、周囲の方々に、
詞を募集するメールを送りました。
また、以前から一緒に歌を作っている
和田あゆみさんとメールで相談し、
新曲を作ろうと温めていた2曲分の案を、
チャリティーソングとして完成させることに決めました。
(他の方からの詞の提供は、結局ありませんでした。)
翌日の17日(木)、聴く方々の心を癒すような
美しく優しい弦楽器の音色が必要だと思い、
朝一番で、若い男性アーティストの方に、
演奏への参加をメールで呼びかけました。
東京でもまだ余震が続き、交通機関も限定的な運行だったので、
女性が楽器持参で来るのは、危険だと思ったのです。
ところがその男性は、現在東京にいないので参加できない、
と返信してきました。
しばらく迷いましたが、心を決めて、
ヴァイオリニストの長尾春花さんに、メールをしました。
間もなく、
「是非参加させて下さい。
 私で何かお力になれるなら、とても幸せです。」
という、春花さんからの返信が届きました。
レコーディングをするスタジオも、取らなければなりません。
でも、果たして営業しているのでしょうか。
交通網のマヒや、計画停電・節電の影響で、営業できない店舗が
多数ある状況です。
(デパートが5時で閉店する様子も、報道されていました。)
問い合わせると、留守番電話になっていましたが、
時間を短縮しながらも、営業を行っていることが判明。
再度電話して、スタジオを「20日正午から5時間」で予約。
普段は、1ヶ月前でもなかなか予約できないのに、
大震災でキャンセルが続出したのか、3日前でも予約ができました。
しかも、2台分しかない駐車場についても、
「近い方がいいですか?
 遠い方がいいですか? 」
と、たずねられました。
(もちろん普段は、駐車場を確保するのも大変です。)
あとは、レコーディング中に停電が起こらないことを、
祈るばかりです。
それから、レコーディングや事前の準備、事後の編集作業のため、
車で機材を運ばないといけません。
多くのガソリンスタンドが、「品切れ」の貼り紙を出して休業している中、
必要なガソリンを手に入れることはできるのでしょうか。
電車も折り返し運転をしていて、私の家の最寄駅を走らない時間帯は、
何と5時間!
陸の孤島状態です。
車もだめ、電車もだめ、という最悪の事態になったら…。
録音機材を背負って、都内のスタジオまで歩いて行くのは、
絶対不可能です!
あゆみさんからは、午前のうちに、早速歌詞の一部が送られてきました。
18日(金)になり、翌日夜の計画停電の予定を見て、心配になりました。
レコーディング前日には、ものすごくたくさんの準備をしなければなりません。
夜に3時間以上も真っ暗になっては、間に合わないかもしれません!
その晩11時過ぎ、あゆみさんから、また歌詞の一部が送られてきました。
19日(土)は、大震災の影響で、前から予定されていた仕事は中止。
計画停電もなくなり、1日中、レコーディングの準備ができることになりました。
けれども、機材をうちへ運ぶため車が必要なのに、
ガソリンが手に入るかわからず、
さらに、買い占めで食料不足と言われる中、
朝、昼、晩の食料(コンビニおにぎり)は、どうなるのか…。
でもうまい具合に、ガソリンもおにぎりも確保でき、環境が整いました。
(エンジニアさんによると、営業しているガソリンスタンドに入るために、
とても長い列に加わり、たくさんの待ち時間を費やしたとのことです。)
あゆみさんからは、サビの最後のフレーズが送られてきました。
しかし、おにぎりをかじりながら、夜遅くまでがんばっても、
2曲分の全体の構成を決めるので精一杯。
歌のパートについては、当日その場で何とかすることにして、
午前3時半までかかって、春花さんの弾くヴァイオリンのパートを
ようやく書き上げました。
20日(日)、いよいよレコーディング当日。
数時間睡眠を取ると、あら不思議。
うまくいっていなかった部分のコード進行で、いいやり方を思いつき、
急いでエンジニアさんにメール。
「さらに考えて、『あなたへ』の、転調する間奏2のコード進行を、
 3小節分変更。
 機材積む前に、お願い〜」。
出発直前までじたばたし、機材を積んだ車の中でおにぎりを食べ、
やっとスタジオへ。
昼の12時、その場で楽譜を渡された春花さんは、
しばらく練習したり、弾き方について打ち合わせしたり。
その後、YouTubeやブログで録音の様子を公開するため、
家から持ってきたビデオカメラをセットして、
春花さんのレコーディングを始めました。
ところが、春花さんの携帯電話が鳴り、「緊急地震警報」が!
慌てて録音を中断。
ドアを開け、避難経路を確保しました。
録音を再開しても、また余震で中断、と落ち着かない状況でしたが、
春花さんはヴァイオリンを構えると、直ちに集中力を取り戻し、
美しい音色を響かせてくれました。
春花さんの演奏中、あゆみさんは歌詞の仕上げ。
春花さんのレコーディングが終了した後、
あゆみさんと私は、完成した歌詞につけるメロディーについて、最終打ち合わせをし、
スタジオを借りる時間の延長手続きをし、
午後3時半から、あゆみさんの歌のレコーディングを始めました。
できたばかりの歌を直ちにレコーディングするという、余裕のないスケジュールで、
しかも花粉の季節真っ最中だったので、歌うあゆみさんは大変でしたが、
途中、サンドイッチタイムをはさんで、
4時間後には無事、スタジオ・レコーディングが全て終了しました。
スタジオからの帰り道、夜遅くまでの編集作業に備えて、
またおにぎりを確保。
明日の祝日も、3食おにぎりで、がんがん編集をしなければ!
ということで、電話でアドバイスをもらってから、
スタジオ・レコーディングが終了するまでの数日間は、
緊張感のとても高い毎日でした。
春花さん、あゆみさん、ありがとうございました。
「あなたへ」、「未来信じて」を、沢山の方々に
聴いていただきたいですね。
そして、救済復興支援のために、
少しでも多くの義援金を、寄付したいと思います。

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「あなたへ」、「未来信じて」の動画、この2曲を収録したCDのご案内を、
当ブログ3月29日の記事でご覧いただけます。