プラシド・ドミンゴ コンサート イン ジャパン 2011

世界3大テノールのひとり、プラシド・ドミンゴのコンサート。
3月11日に大震災が起こったことにより、このコンサートは、
一層大きな意味を持つものとなった。
東京の演奏会も次々に中止になる状況の中、
ドミンゴは、「日本に行くな」という周囲の声を振り切り来日。
自ら義援金を寄付すると共に、次のようなメッセージを発した。
「未曾有の大地震、そして原子力発電所の事故による影響…、
 この大きな試練に日本の皆様方が勇気を持って耐え、
 この困難を乗り越えようと努力されていることに、
 深く敬意を表します。
 私は音楽の持つ力を信じています。
 音楽を通じて人々の気持ちは寄り添い、
 音楽は人々の心をひとつにします。
 音楽を届けることで少しでも力になることができればと
 日本に参ることにいたしました。
 一人ひとりの力は小さいかもしれません。
 でも手を結び、ひとつの思いを共有することができれば
 それは大きな力となり、希望につながります。
 音楽が心と心を結び、皆で力を合わせて
 明日につなぐ原動力となることができればと願っております。
                     プラシド・ドミンゴ
(「プラシド・ドミンゴ コンサート イン ジャパン 2011」
ホームページより抜粋)
共演を予定されていたマルティネスに代わり、
ヴァージニア・トーラが出演。
ユージン・コーン指揮、日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で、
ヴェルディプッチーニのオペラからはもちろん、
レハールオペレッタ、ブロードウェイ・ミュージカル、
サルスエラ(スペイン語による一種のオペレッタ)からも幅広く選曲され、
ドミンゴの様々な魅力を、たっぷり味わうひとときとなった。
私が聴いたのは、4月10日に行われたNHKホールでのコンサート。
テレビでの収録が行われていたので、
近々多くの人々も、その模様を楽しむことができそうだ。
バーンスタインのミュージカル『ウェスト・サイド・ストーリー』から
「トゥナイト」。
ドミンゴは、一目で恋に落ちた青年トニーの気持ちを、
ひたむきな情熱と憧れを湛え、
星空に届くほど、まっすぐに歌い上げる。
1941年生まれ、今年ちょうど70歳になるドミンゴの、
なんという若々しさ。
声も豊かで、さりげない風に歌っていても、
広いNHKホールに、明るく響き渡る。
「魅惑の宵」、「君住む街角」なども披露。
オーケストラをバックにしたドミンゴのミュージカルナンバーは
とてもゴージャスで、まさに至福の時間。
一方、オペラからは『トスカ』の「星は光りぬ」、
アンドレア・シェニエ』の「祖国の敵」、
リゴレット』の「そうだ、復讐だ!」が選曲され、
絶望、悲痛、苦悩、憎悪が、リアリティを持って表現された。
「星は光りぬ」では、権力者の陰謀によって処刑される
画家カヴァラドッシの心の動きが、刻々と表現され、
私は涙を抑えることができなかった。
アンコールも盛りだくさん!
中でもとりわけ、唱歌「ふるさと」を、
ドミンゴが日本語で、聴衆と共に大合唱をした時には、
大きな感動が、会場を包み込んだ。
誰もが皆、大震災で失われた日本の美しい風景や、
優しかった人々を、思い起こしたであろう。
終演後、私も含め多くの人々が、
義援金を寄付して、会場を後にした。
13日、サントリーホールでも、
ドミンゴによるチャリティー・コンサートが行われる。