森下洋子さんの「くるみ割り人形」

松山バレエ団が、毎年、クリスマスの時期に公演を行う
くるみ割り人形」。
森下洋子さん、清水哲太郎さんご夫妻の舞台を、
やっと観る機会に恵まれた。
今年は、二つの意味で、記念となる年だという。
ひとつは、松山バレエ団の「くるみ割り人形」の公演が、
1982年の初演より30年目を迎えたこと。
そして、もうひとつは、3歳でバレエと出会った森下洋子さんが、
舞踊歴60年目という、すばらしい節目を迎えたことだ。
純真な少女クララを演じ、踊る森下さんの
羽のように柔らかく、ふわりとした動きに、
まず目を奪われる。
そして、醜いくるみ割り人形の内に秘められた美しさに気づき、
命がけで人形を守ろうとするクララの心が、
森下さんによって、ありありと表現されるのを、
目の当たりにする。
バレエ一筋に、真摯に打ち込んできた森下さんならではの境地。
舞台で踊りつつ、踊りの美しさ以上の、大きく深いものを、
私たちに見せてくれる。
醜いくるみ割り人形が、美しい王子の姿に戻り、喜ぶクララ、
王子とさまざまな国を巡り、愛情を育むクララ、
そして、王子とのつらく悲しい別れを迎えたクララ、
クララの魂のありようが伝わってくるのであった。