バルバラ・フリットリ ソプラノ・リサイタル・イン・ジャパン2012

昨年、大震災から3ヵ月後のメトロポリタン歌劇場来日公演で、
主役を演じる歌手たちが、相次いで来日を辞退した中、
日本に駆けつけ、急な代役で『ラ・ボエーム』のミミを歌い、
大きな慰めと励ましをもたらしてくれたバルバラ・フリットリ
あれから約半年が経ち、再び来日したバルバラは、
ヴェルディプッチーニ、デュパルクそれぞれを中心とした
プログラムによる、三夜のリサイタルを行った。
私が聴いたのは、プッチーニが中心のプログラム。
前半はマルトゥッチの歌曲、「追憶の歌」。
7曲で構成される連作歌曲だ。
イタリアの作曲家、指揮者、ピアニストであった
ジュゼッペ・マルトゥッチ(1856〜1909)は、
ボローニャ音楽院院長、ナポリ音楽院院長を歴任し、
また、ヴァーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」の
イタリア初演を行った人物だ。
バルバラは、マルトゥッチの「追憶」に対して、
まだまだ勉強中との様子がうかがわれたが、
このような埋もれた作品に光を当てるチャレンジには、
今後も期待したいと思う。
後半は、バルバラの魅力が存分に発揮され、
とても楽しめる内容だった。
『ジャンニ・スキッキ』より「私のお父さん」、
マノン・レスコー』より「この柔らかなレースの中で」、
そしてアンコールでは、『トスカ』より「歌に生き愛に生き」。
バルバラは、それぞれの役になりきり、
聴く者みなの心に、強く訴えかけるような歌を聴かせてくれた。
「私のお父さん」では、表情も佇まいも、可愛らしい若い女性のようで、
バルバラのまた新しい一面を発見したような気持ちがした。
最後の「歌に生き愛に生き」では、
歌姫トスカの気高さや悲痛な心情が迫り、
深く心を動かされた。