オペラ「忠臣蔵」外伝

Bunkamuraオーチャードホールで、
三枝成彰さん作曲のオペラ「忠臣蔵」外伝が
上演された。
この作品は、1997年に初演された
オペラ「忠臣蔵」が再構成されたもので、
綾衣と平左衛門、お艶と金右衛門という
二組の男女のエピソードが描かれる。
台本・演出は島田雅彦さん、
構成は玉木正之さん、
美術監督日比野克彦さん、
照明は海藤春樹さん。
主な出演は、ソプラノの佐藤しのぶさん(綾衣)、
同じくソプラノの塩田美奈子さん(お艶)、
テノールの佐野成宏さん(橋本平左衛門)、
同じくテノールの樋口達哉さん(岡野金右衛門)。
三弦の浅野 藍さん、
語り部、大鼓奏者の大倉正之助さん、
指揮の大友直人さん、東京交響楽団
二組の男女の情景が、交互に描かれる。
まず綾衣と平左衛門。
江戸の遊郭大石内蔵助が浮かれている、と
信じ込んだ平左衛門は、内蔵助をいましめようと
遊郭にやって来て、遊女綾衣と出会う。
季節は移り変わり、雪の夜。
綾衣を残し、討入りに加わろうとする平左衛門に、
綾衣は「私を殺して」と迫る。
綾衣を刺した後、平左衛門も自害して果てる。
次にお艶と金右衛門。
金右衛門は身分を隠し、吉良邸の設計をした
大工の娘、お艶に近づき、
絵図面を手に入れようとする。
お艶は、金右衛門の不審なふるまいに
不安を抱きながらも、金右衛門を一途に思い、
雪が降ったら所帯を持てると信じて待っている。
金右衛門は、お艶に未練を残しながらも、
雪の中、討入りをするため、去って行く。
三枝さんの音楽は、流麗でロマンティック。
華やかな花火の季節から、雪が血に染まる季節まで、
二組の男女の憧れ、揺れる思い、不吉な予感など
移ろいゆく心情が、濃密なメロディーにより、表される。
別れ、死の場面では、心の悲痛な叫びが、
畳みかけるようなリズムで、迫ってくる。
日本の言葉でアリアを作る、
オーケストラの響きで行間を読ませる、
ということに、どれほど苦心されたことだろう。
忠臣蔵をオペラにする、という
三枝さんの意気込みは、並々ならぬものであることが、
全篇から感じられた。