神谷明美さんのソプラノリサイタル

神谷明美さんのソプラノリサイタルが、
東京オペラシティ リサイタルホールで行われた。
共演は、ピアノの山田武彦さん、フルートの立花千春さん。
神谷さんは、曲目解説を自ら執筆、
フランス語の歌詞も自分で和訳するなど、
作品研究も精力的に行ってきた。
プログラムの構成も意欲的で、
神谷さんならではの個性が光る。
ヴィクトル・ユゴーの詩に、
2人の作曲家が、それぞれ曲をつけたという、
サン=サーンスの「見えない笛よ」と
カプレの「おいで、見えない笛よ」との聴き比べ。
また、加藤周一の詩で、
中田喜直の「さくら横ちょう」と
別宮貞雄の「さくら横ちょう」との聴き比べ。
それから、私の大好きなフォーレの歌曲を
たくさん味わったことはもちろん、
今まで聴く機会のなかった
シャミナードやドリーブの魅力的な歌曲を
聴くことができたのは、
とても素敵な経験になった。
アンコールの、フォーレ作曲「月の光」も入れて、
5曲、フルートが加わる。
立花さんのフルートは、
歌に拮抗するように、
華やかな演奏を繰り広げた。
ご紹介しきれないほど、多彩なプログラム。
聴いていて、とても楽しいのはもちろんのこと、
技巧的に難度の高い曲が多く、
神谷さんの表現力に驚かされた。
特に、阪田寛夫の詩に
中田喜直が曲をつけた「魚とオレンジ」。
この作品は、8曲から成る組曲で、
1曲目は、主人公の女性の
幼く純真な頃の回想だが、
2曲目から数曲は、
成長した後の、容姿に対する劣等感、
思いを寄せる男性の目を奪う
他の女性への激しい嫉妬など、
心に渦巻く感情が歌われる。
詩の言葉がストレートであり、
ほとんど普通の話し言葉である一方、
旋律は複雑で、高度なテクニックを要求する。
緊張感が高まり、ゾクゾクする。
本来、秘めておきたい
女性の心の底の底にあるものが、
神谷さんの歌声、表情、演技により露になり、
突きつけられた。

 ♪ ♪ ♪

神谷明美さんについては、
ブログ2009年11月10日の記事
2010年3月5日のインビューも、
ぜひご覧ください!