ワシントン・ナショナル・ギャラリー展

国立新美術館で、ワシントン・ナショナル・ギャラリー展が行われている。
現在では大変な人気を誇るモネやルノワールたち印象派の作品は、
当時、画壇に認められなかったため、ほとんど売れず、
彼らは長年、極貧にあえいだ。
印象派の作品のすばらしさを早くに認めたのがアメリカ人たちで、
次々に購入していったという。
そのような理由で、印象派の初期の重要な作品が、
ワシントン・ナショナル・ギャラリーに収蔵されることになった。
今回私が面白いと思ったのは、ほぼ同じ時期に同じモデルを描いた
二人の画家による作品だ。
ひとつは、モネ作『日傘の女性、モネ夫人と息子(1875年)』。
これは、第2回印象派展に出展された。
もうひとつは、ルノワール作『モネ夫人とその息子(1874年)』。
確かに同じ母子を描いているのだが、印象がまるで違う。
ルノワールの方は、上品な雰囲気に仕上がっているものの、
やはりモデルを見る目が客観的なせいか、
女性と子供は、モデル以上の存在ではない。
それに、ルノワールの描く人物にしては、顔色が悪く、
表情が生気に欠けるように感じる。
一方、モネの方は、子供のばら色のほおが愛らしく、
かぶっている黄色い帽子が、太陽の光に照らされて輝いている様や、
水色の空の柔らかく踊るようなタッチや、雲の輝きからは、
この上ない幸せが感じられる。
何より、日傘の女性(妻カミーユ)の、
振り返ってこちらを見つめるまなざしが優しい。
揺れるスカート、帽子のベールの動きの、何と柔らかいこと。
草原に立つのが愛する人たちだということが伝わってくる。
愛に溢れたこの作品は、とても魅力的で、
以前から私の大好きな作品だった。
が、今回の展覧会がきっかけで、
わずか数年後に、カミーユが亡くなってしまったことを知り、
ますます、この光と風の中にたたずむ女性に、
愛おしさを感じたのである。