西本智実さんがベラルーシ国立交響楽団を指揮する演奏会が、
ゴールデンウィークにサントリーホールで行われた。
今回のツアーは、4月7日の名古屋に始まり、全国13ヶ所。
今年は桜の開花が遅かったので、ベラルーシ交響楽団の方々も、
日本の桜を楽しむことができただろう。
4月29日のサントリーホールでの演奏会は、ツアー最終日。
まぶしい光と新緑の中、さわやかな風に吹かれながら
開場を待つ人々が、多く見受けられた。
アークヒルズのカラヤン広場では、テラス席が満席。
私も、アークヒルズに設えられた滝の、すがすがしい水音に耳を傾けながら、
テラス席でコーヒーを味わっていた。
ベラルーシ共和国は、旧ソビエト連邦から独立した東ヨーロッパの国で、
国境を接する隣国は、ロシア、ウクライナ、ポーランド、
リトアニア、ラトビアだ。
西本智実さんのおかげで、今までなじみのなかったこの地域のオーケストラを、
いくつも聴くことができ、とても嬉しく思う。
ラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第3番」を演奏したのは、
サンクトペテルブルク生まれ(1986)のアレクサンダー・ルビャンツェフ。
ロシアのペトロザヴォーツク市国立音楽院に在学中の、若いピアニストだ。
曲が進むにつれ、どんどん調子を上げ、力強い演奏を聴かせてくれた。
ルビャンツェフは、アンコールで2曲演奏した。
特に、2曲目のタランテラ!
鮮やかなリズム、魅惑的な響き、心ときめかせる疾走感。
聴衆も大喜びで、拍手喝采していた。
後で知ったが、アンコール2曲とも自作自演のようで、驚いた。
ルビャンツェフ自身が公開したと思われる、YouTubeの動画で追体験できる。
(“Lubyantsev Tarantella”、2010年1月2日公開 http://www.youtube.com/watch?v=ZOwPVNswxWY
“Lubyantsev Tarantella”、2010年1月4日公開
http://www.youtube.com/watch?v=jLTQalHOJ1w )
リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」、
ラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第3番」、
ルビャンツェフの「リング・ダンス」、「タランテラ」、
プロコフィエフの「古典交響曲」、とプログラムは進み、
いよいよストラヴィンスキーの「火の鳥」。
地底の真っ赤なマグマが、ふつふつと沸き立っているような、
静かな、しかしエネルギーを秘めた、唸るような低音。
西本智実さんとベラルーシ国立交響楽団の人々が、
心をひとつにし、緊張感をもって音楽を創り上げていく。
火の鳥の出現や踊りの、神秘的であり軽やかな飛翔を、
フルートやクラリネットが絶妙に表現。
王女たちのロンドでは、オーボエが、
ロマンティックなメロディーをたっぷりと聴かせ、
カスチェイらの凶悪な踊りでは、ファゴット、ホルン、トロンボーンが、
荒々しく鳴り響く。
最後の壮大なエンディングでは、雄大なロシアの大地と
湧き上がる民衆の喜びが感じられ、心動かされるものだった。
西本智実さんの指揮は的確であり、また流麗で、
オーケストラとの一体感が感じられた。
次は、どの国のオーケストラを伴って、
日本へ帰って来てくれるのだろう。