NHK「小さな旅」 歳月の旅路 願(ねがい)にて〜新潟県 佐渡市〜

NHKの長寿番組「小さな旅」は、もう30周年。
16年前の旅人が、再び、佐渡の北端の「願」という集落を訪れるという
30周年記念番組が放映されました。
19戸、44人の暮らしが営まれている佐渡、「願」。
その地を再訪する旅人は、アナウンサーの加賀美 幸子さん。
番組最初の方、加賀美さんが船に乗り、佐渡に向かうシーンが、
とても印象的です。
青い海、春の日差し、潮風・・・。
なつかしい風景や人々との再会への期待が高まります。
何だか、私も旅のお供をさせていただいているように感じました。
加賀美さんは、「願」に住む男性の方と女性の方、
お二人に再会します。
前回、平成8年で60代だったお二人は、
16年の歳月を経て、84歳となっています。
そして、そのような高齢となった今でも、男性は漁に出、
女性は畑で野菜を育て続けています。
のんびり暮らしているわけでなく、日々、大自然と向かい合い、
高齢をものともせず、仕事を続けている・・・。
「ゆるぎない日常」という意味の大きさ、深さは、
想像をはるかに超えるものです。
16年前の映像も紹介され、この土地に流れる独特の時間や、
住んでいる方々の助け合う心が、沁みるように伝わってきました。
穏やかで温かい加賀美さん。
加賀美さんが16年前に語りかけたこと、
そして2012年の今、語りかけたこと。
漁師の方にも、畑仕事をされている方にも、
忘れられない言葉となっていることでしょう。
加賀美さんと言葉をかわす「願」の方々のリラックスした笑顔に、
あたたかい時の流れを感じました。
私の友人もこの番組を見て、感想を伝えてくれました。
「都会で働いている人のことを
 “旅に出ている”って言っていたでしょう?
 あの言い方も面白いね。
 都会で働いていても、家はここにあるっていうのか、
 お互いに野菜とか生活用品を送りあったり、
 電話したり。
 離れていても、つながっている、
 そういうところがいいなと思う」。
84歳の女性の息子さん、娘さん方は、
旅に出ています(島を出て暮らしています)。
こちらで一緒に暮らそう、という誘いを受けず、
佐渡の「願」で暮らし続ける女性のもとには、
息子さん、娘さん方から、さまざまな品物が届きます。
女性からは、丹精込めて育てた野菜や、
その土地に伝わる飴を、手作りして送ります。
そして、女性は、ひ孫さんからの電話を、
とても楽しみにしているのです。
ふるさと、変わらない風景。
漁や畑仕事という、変わらない暮らし。
島の中にある小さな集落ですが、
ゆかりの方々にとって、
ふるさととは、どれほど大きな存在であることでしょう。
「小さな旅」にも、30年という年月があったからこそ、
今回のような番組が生まれたのですね。
ある土地を訪れる「小さな旅」、
そこから感じられる、にっぽんのふるさととは、
私たち日本人の誰にとっても、
大きな、普遍的な、こころのありかなのだと思います。