ワレリー・ゲルギエフ率いるマリインスキー歌劇場管弦楽団。
「鉄人」の異名をとるゲルギエフは、日本各地を飛び回り、
15日間で12回のコンサートを開く。
オール・ロシアン・プログラム。
前方を睨みつけるゲルギエフの険しい顔。
チラシの写真に導かれ、
ストラヴィンスキー特集の日を選んだ。
「春の祭典」。
衝撃を受けたのは、高校生の頃だったか。
激しいリズム、咆えるような金管。
音楽全体が、うねるように渦巻く。
ストラヴィンスキーは、20世紀を代表する、
ロシア生まれの作曲家。
「春の祭典」は、ディアギレフのロシア・バレエ団のために
書いた音楽だ。
描かれるのは、春の神秘的な兆し。
大地への讃歌。
邪教徒の営み。
乙女たちの中から、太陽の神への生贄(いけにえ)が選ばれる。
選ばれた乙女は激しく踊り続け、最後に壮絶な死を遂げる。
サントリーホールでは、オーケストラの後方にも席があり、
客席がぐるりとオーケストラを囲む。
私の席は、後方席最前列。
目の前に、2セットのティンパニ群と、大太鼓。
2枚の銅鑼。
手が届きそうなほど、間近だ。
打楽器群のすぐ向こうには、
10人以上のチューバ、トロンボーン、トランペット。
ホルンも8人。
いつもなら、客席から一番遠いはずの打楽器や金管が、
至近距離にある。
大音響で、身体が震える。
耳から音楽を聴くのでなく、
腹の底に響いた音を、聴いているようだ。
ゲルギエフは、きびきびした動きと鋭い視線で、
生命の爆発的な力を作り上げていった。
この全国公演は、12月6日まで。
http://www.japanarts.co.jp/html/2009/orchestra/mariinsky/index.htm