ラファウ・ブレハッチ 2010年日本公演

前回のショパン国際コンクール(2005)で優勝した
ポーランドのピアニスト、ラファウ・ブレハッチが、
全国で9回の公演を行っている。
東京オペラシティコンサートホールで行われた
オール・ショパン・プログラムのリサイタルを聴いた。
先日のポリーニとは逆に、プログラムの幕開けが
「バラード第1番」。
70歳近いポリーニが、意外に淡々とした感じであったのに対し、
25歳のブレハッチは、旋律をたっぷりと歌わせながら、
荘重な序奏を弾き始めた。
ブレハッチのひたむきな気持ちが伝わってくる。
今回のプログラムは、バラードの第1、2番、
スケルツォの第1番、ポロネーズの第1、2番、
ワルツの第2、3、4番など、4曲のマズルカも含め、
すべてショパン20代の時代の作品だ(アンコールの曲を除く)。
ブレハッチの演奏は、フレッシュで率直、まっすぐ。
同年代の親友ショパンの曲を、親しみをこめて
演奏している、というような印象を受けた。
(余談だが、ショパンブレハッチ
同じポーランド人であるばかりでなく、
顔も似ていると指摘する声もあるらしい。)
一点残念だったのは、ソナタが入っていなかったこと。
そのため、演奏会自体も短い時間で終わってしまい、
物足りなさが残った。
ブレハッチは、二十歳でショパン・コンクールの覇者になった際、
マズルカ賞、ポロネーズ賞、コンチェルト賞を受賞した上、
クリスチャン・ツィメルマン創設のソナタ賞も受賞したという。
そのソナタを、一曲でも演奏してもらいたかった。
3曲のアンコールのうち、2曲目で演奏した「英雄ポロネーズ」。
伸びやかで輝かしく、今の若きブレハッチのすばらしさが、
最大限発揮された。
今後年齢を重ねるにつれ、ショパンの苦悩や絶望と言った感情も、
にじみ出るように表現することを、楽しみにしたいと思う。
演奏会終了後、本当に偶然であったが、
ブレハッチが私の目の前を横切っていった。
なんと、私と同じぐらいの背の高さ。
信じられないほど小柄なブレハッチに、
皆、驚きの声を上げた。
ステージでは大きく見えるのに・・・と、
あちこちでささやく声。
「愛くるしい少年、ブレハッチ」というイメージだった。