オペラ「トゥーランドット」 (プッチーニ作曲)

ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラが、
数週間後に映画館で観られるというMETライブビューイング。
プッチーニ作曲の「トゥーランドット」。
4年前、トリノオリンピックの女子フィギュアスケートで、
荒川静香選手が、見事金メダルを獲得した時の曲が、
このオペラの中のアリア、「誰も寝てはならぬ」だった。
トゥーランドット」は、プッチーニの最後のオペラ。
薄幸のヒロインが死を迎える、といった今までの代表作とは
全く異なる意欲作だったが、
台本作りも含め、4年以上手がけていたにもかかわらず、
1924年プッチーニは65歳で癌で亡くなった。
第3幕の女奴隷リューの死の場面で、プッチーニの筆は途絶え、
最後の主人公たちの愛の二重唱を完成させることはできず、
アルファーノが、後を継いで仕上げたという。
命を懸けて人を愛するカラフ王子、女奴隷リューによって、
残酷なトゥーランドット姫の心が溶かされ、
愛に目覚めるという物語が、古代中国を舞台に描かれる。
トゥーランドット姫役のマリア・グレギーナは、
「憎まれ役のトゥーランドットなど、皆やりたくないのよ。
 観客はリューに共感するから」
と、インタビューで答えていたが、
迫力のある声で、氷のような心の姫を演じた。
リュー役のマリーナ・ポプラフスカヤは
情感のこもった歌を聴かせ、
カラフ王子役のマルチェッロ・ジョルダーニも、
若々しく力強い声で、「誰も寝てはならぬ」を歌った。
インタビューでは、小道具担当のスタッフも登場。
首を切り落とされたペルシャの王子の、
その生首作りの手順を紹介した。
演出は、巨匠と呼ばれるゼッフィレッリ。
最初の幕が上がると、月も隠れがちな異国の夜。
薄暗い闇の中にひしめき合う、かわら屋根の家々。
泥のような色の服をまとった群衆がうごめき、
ペルシャの王子に対して、「処刑だ!」と叫ぶ。
混沌として野蛮。
イタリア人プッチーニが思い描いたであろう、
謎めいた東洋の王国、古代中国。
ゼッフィレッリは、それを舞台に再現する。
やがて月が現れ、冷たい光であたりを照らすと、
王宮が、舞台下からせり上がって出現、
民衆の家々の背後にそびえ立つ。
王宮の大きな柱の彫刻から、
姫の衣装、冠にいたるまで、
舞台に現れるものすべてが、手抜かりなく、
細やかな感覚で、デザインされている。
映画では、登場人物たちの衣装の生地の模様や、
群衆たちに施された中国風のメークなども、
よく見ることができて、興味深い。
ゼッフィレッリ演出によるメトロポリタン・オペラ
トゥーランドット」を、DVDでも見ることができる。
1987年の作品で、プラシド・ドミンゴが出演、
指揮はジェームズ・レヴァインだ。
また、「トゥーランドット」のDVDでは、
1998年に、北京の紫禁城で上演された作品もお奨めだ。
ズービン・メータが指揮、演出はチャン・イーモウ(張芸謀)、
フィレンツェ5月音楽祭管弦楽団、合唱団などが演奏。
出演は、ジョヴァンナ・カゾッラ(トゥーランドット)、
バルバラ・フリットリ(リュー)、セルゲイ・ラーリン(カラフ)。
ドキュメンタリー映像「メイキング・オブ・トゥーランドット」では、
紫禁城をオペラの舞台にしていく大掛かりな装置も紹介される。
歴史的な建造物で行われる野外オペラは、スケールが大きい。
独特の高揚感がある。
誰も寝てはならぬ」の聴き比べなら、CD「トゥーランドット」。
3大テノールパヴァロッティドミンゴカレーラスそれぞれの
美声も堪能できる。

METライブビューイング:オペラ | 松竹

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