代役がずらり オペラ「ばらの騎士」

大震災後、多くの公演が中止になる事態に。
楽しみにしていた新国立劇場の「ばらの騎士」は大丈夫かしら。
心の片隅に不安を抱きながら、劇場に向かった。
(果たして開演できるのかしら、とハラハラしたのは、
昨年秋のアルゲリッチ以来だ。)
入り口の近くに、大きなポスターが貼られているのを見て、
「ああ、大丈夫だった」とほっとしたのもつかの間、
「指揮者・出演者変更のお知らせ」が目に飛び込んだ。
元帥夫人役、オクタヴィアン役、ゾフィー役、全てキャンセル。
それからファーニナル役、そしてなんと指揮者まで。
新聞で、日本で開催予定の国際会議が、
次々に中止になっている、と報道されている。
その中には、福岡(5月)、神戸(10、11月)が含まれ、
さらに来年2012年10月の横浜、というずっと先のものまで・・・。
今回の、外国人演奏家たちの来日中止も、
「日本は怖い」という海外の認識を、
まざまざと見せつけるものだった。
新しいキャストと指揮者は、次の通りである。
元帥夫人役、アンナ=カタリーナ・ベーンケ、
オクタヴィアン役、井坂惠、
ゾフィー役、安井陽子、
ファーニナル役、小林由樹、
指揮、マンフレッド・マイヤーホーファー。
オックス男爵役のフランツ・ハヴラタは、予定通り出演。
新国立劇場初登場ということだが、味のある歌と抜群の演技力で、
聴衆のハートを掴み、
カーテンコールでは、一番の人気だった。
今年は、「ばらの騎士」初演(1911年)からちょうど100年の
記念すべき年である。
この新国立劇場の「ばらの騎士」は、2006/2007シーズンのための
プロダクションであり、今回はその再演であるが、
時代背景は、演出家ジョナサン・ミラーによって、
18世紀から、初演の翌年の1912年に移されている。
その理由について、ミラー自身が、当時(2007年5月)次のように述べていた。
”このオペラの創り手の二人(台本作家と作曲家)と、
 劇中の登場人物たちが、
 どちらも、迫り来る「時代の大変動」を
 薄々感じている人々であるからなのです”。
ここでミラーが言う時代の大変動とは、第一次世界大戦
それに続く第二次世界大戦であった。
ところが2011年の、まさに今この時、
この日本が、大変動に直面している。
このオペラにはコミカルな要素も多く、
最後は若者たちが結ばれて終わるストーリーなのだが、
演出のミラーが4年前に述べたことを読み返すと、
とても落ち着かない気持ちになってくる。