カラヤンに見出され、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、
ニューヨークのメトロポリタン歌劇場、
ロンドンのコヴェントガーデン王立劇場などに出演、
国際的に活躍する初のアジア出身オペラ歌手となった
スミ・ジョー。
何年も前に、たまたまテレビで見て、
その素晴らしさに仰天したのだが、
生で聴く彼女の歌は、想像以上のものだった。
西本智実指揮、リトアニア国立交響楽団と共に巡る
全国ツアー12公演のうち、
最後の、サントリーホールでの公演を聴いた。
オーケストラの団員たちの間を通り、
舞台に現れるスミ・ジョーの、何という存在感!
若さの弾けるようなアデーレ。
そして、胸を病み、死期の近づいたヴィオレッタ(椿姫)。
オペラの舞台セットや背景がなくても、
架空の登場人物たちが、
まさに目の前に現れたかのように感じる。
そしてアデーレやヴィオレッタの
希望、願い、悲しみ、苦悩を分かち合う。
ステージにいるのは、アジア人ソプラノ、スミ・ジョーだ、
ということを忘れてしまう。
声の表情が多彩で、何と言ってもコロラトゥーラの超絶技巧、
鈴を転がすような輝かしさは、圧倒的だ。
このツアーに合わせて、
CD「スミ・ジョー&西本智実 イン・コンサート」が
リリースされた。
初回限定版には、ボーナスDVDが付いている。
その中でスミ・ジョーは、インタビューに答え、
アジア出身の歌手に重要なのは、
言葉の習得に加え、ヨーロッパ文化を
深く理解することだと述べている。
また、コロラトゥーラ唱法を身につけるため、
長年、毎日7〜8時間練習し続けたと言う。
こうしてスミ・ジョーは、自分の生まれた時代も、
国も民族も超えた。
様々な時代の、様々な言語・文化を背景にしたオペラの中で、
あらゆる役になりきり、確かな存在感を放つ。
果てのない探究心ゆえに、広く奥深い世界と大きな自由を、
彼女は手に入れることができたのだろう。