オペラ「カプリッチョ − 音楽のための会話劇」 (R.シュトラウス作曲)

19世紀末から20世紀前半にかけて活躍したドイツの作曲家、
リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949)。
サロメ」、「ばらの騎士」などで、人間心理の深い部分を描き出してきた
彼の最後のオペラが「カプリッチョ」(1940〜41作曲)だ。
「音楽が先で、言葉が後」か、「言葉が先で、音楽が後」か。
オペラの作曲に際し、彼自身、この問題に深い関心を持っていたという。
カプリッチョ」では、まさにその問題で、美しい伯爵令嬢マドレーヌ(未亡人)が、
二者択一を迫られ、思い悩む。
音楽が先と主張する音楽家フラマン(テノール)と、
言葉が先と反論する詩人オリヴィエ(バリトン)。
ニューヨークのメトロポリタン歌劇場での2011年4月23日の公演が、
METライブビューイングとして、日本の各地の映画館で公開された。
楽家と詩人の二人から求愛されるが、心の決まらないマドレーヌ(ソプラノ)を、
ルネ・フレミングが情感たっぷりに演じる。
特に終盤の、ハープを弾きながら、ひとり部屋の中で自問するシーンは
聴き応えがあり、
彼女の演じる「ばらの騎士」の元帥夫人の、第一幕の独白シーンを思い出させる。
封建社会という縛りの中で、それでもなお、
真実や生き方を考え、求めようとする女性の姿が、
レミングの説得力のある歌唱によって、立ち現れた。
初演の時、R.シュトラウスは78歳ぐらいであったが、
もっともっと長生きして、この続編を書いたとしたら、
どのような展開になっただろうか・・・。