昨年大晦日、横山幸雄さんが二回目のジルヴェスターコンサートを
東京オペラシティコンサートホールで行った。
夕方5時半から夜中1時頃まで、約7時間かけて弾ききった
ベートーヴェンの5曲全てのピアノ協奏曲と5大ピアノソナタ。
耳が聴こえなくなるという、音楽家にとって苦難に満ちた運命を
乗り越えていったベートーヴェンを演奏することは、
大震災を経験した年だからこそ、より意義の深い試みであったという。
横山さんはプログラムの中で、次のように述べている。
「(前略)
一音楽家としては、何が出来るのかを改めて考えさせられる
きっかけになりました。
音楽が人の心を奮い立たせ勇気付けたり、
また和ませ穏やかにしたり・・・
出来ることはたくさんあるのではないか・・・と」。
横山さんの繰り出す多彩な音色には、いつも感銘を受けるのだが、
今回は特に、ベートーヴェンの優美で繊細な響きを
心の奥底で味わった。
叩きつけるような激情や、ヒロイズムとの対極にある、
穏やかで静かな美しさ。
それは特に、「月光」や「熱情」といったピアノソロで、
深く感じられた。
休憩時間には、横山さんが昨年のリサイタルで試演した
ローランドのデジタルグランドピアノを、私も弾いてみた。
また、海老天入りの年越しそばや、おしるこをいただき、
ニッポンの年末気分を楽しんだ。
カウントダウンをして、年が明けたと同時に、
華麗に演奏されたピアノ協奏曲第5番「皇帝」。
指揮者の山田和樹さん、横浜シンフォニエッタの皆さんと共に、
力強く演奏する横山さん。
新しい年への希望を胸に、会場はひとつになった。