グザヴィエ・ドゥ・メストレのハープ・リサイタル

この秋、世界最高と称されるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ソロ・ハーピストという職を離れ、フリーの活動に専念することになった
フランス出身のハーピスト、メストレ。
銀座の王子ホールで、"アルパ・ラティーナ(ラテンのハープ)"と題される
ハープ・リサイタルを行った。
素晴らしく背が高く、すらりとした長い脚、
映画俳優のようなたたずまいの若きメストレは、
ハープの貴公子と呼ばれ、親しまれているが、
会場では、老紳士が目立つことに驚いた。
私の隣の紳士も、一曲聴き終えるたび、
低く落ち着いた声で、「ブラーヴォ!」を連発。
普段、ウィーン・フィルなど、海外のオーケストラを聴いている人々が、
多数訪れていたのだろうか?
プログラムは、スペインとフランスの作曲家の作品で、構成された。
ドビュッシーなど、フランスものも華麗で心を奪われるが、
タルレガの「アルハンブラの思い出」をはじめとする
グラナドス、ファリャなどスペインものが圧巻だった。
休憩時間、ハーピストと見られる女性たちが、
そのテクニックの素晴らしさに、ため息をついていたが、
鍵盤を押せば音の鳴るピアノですら困難であろうほど速く、
弦を10本の指ではじきながら、演奏しているのである。
(弦は太いので、ちょっと触れる程度では、良い音は出ない。)
その多数紡ぎ出される音が、最弱音では柔らかく溶け合い、
強音では、ハープに対する先入観が覆るほど、激しく鳴り響く。
一台のハープから、メロディーや伴奏などが、それぞれ異なる音質で、
立体的にくっきりと浮かび上がっていた。
第一部最後の曲、ファリャの「スペイン舞曲 第1番」。
ファリャが20代の終わりに作曲し、
オペラの作曲コンクールに応募して、入賞を果たした出世作
「はかなき人生」(一幕オペラ)の中の曲だ。
フラメンコで歌い踊るシーンの音楽だそうだが、
情熱的で、独特の躍動感がある。
メストレは、メロディーをメランコリックにハープで歌わせつつ、
ドキドキするようなリズムを、同時に刻む。
とてもスリリングな気持ちを味わった。
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Xavier de Maistre played the harp at OJI HALL.
The program contained pieces of Spanish and French composers.
His performance was delicate and passionate.