海原純子さん著 「しあわせ」への医学

先月の大震災以来、多くの方々からメールをいただきました。
東京やその近郊にお住まいの方々ばかりで、ご無事なのですが、
「自分は何もしてあげられていない、と無力感を感じている」、
との気持ちをつづったメールが、何通もありました。

普段、情熱を持って良い仕事をしている方でも、
大震災のあまりの惨状の前で、
ひとりの人間ができることは、何て小さいのだろうと、
見せつけられる思いなのでしょう。

心のありようを考えるために、何か良い本はないかしら、と思い、
棚の中からすぐ見つけたのは、
心療内科医・海原純子さんが書かれた“「しあわせ」への医学”です。
海原さんは、波乱万丈な人生を送ってこられた方で、
苦労してクリニックを開いたり、多くの著書を出したり、
また、医師として多忙な中、本格的な歌手活動も始めたりしています。

この本は2003年に出されたもので、社会状況は当然、現在と異なりますが、
心療内科医としての視点で書かれたアドバイスの数々は、
いつの時代にも通用するものと思います。
ご紹介しましょう。

 ‘焦ることはありません。
  車もいつもハイスピードでは走れないのです。
  無理して「やること」を見つけないでください。
  (中略)
  いつも元気なあなたが、初めて味わっているかもしれない冬眠を
  大切に受け入れてください’。

 ‘自分が役に立たない人間である、と落ち込んだ時でも、
  周りの人に温かい笑顔を送ることはできるのです。
  そしてその笑顔で、周りの人がどんなにか救われることでしょう。
  何か目立つことをするだけが、生きている価値ではありません。
  そんなことよりも、自分の存在自体がとても意味のあるものなのだ、
  と認識することを始めてみてください’。

さて、海原さんのブログ「海原純子のHarvard Diary」では、
被災された方々に向けた、海原さんご自身の活動が紹介されているほか、
私たちに何ができるかのアドバイスもあり、とても参考になります。
特に2011年4月17日の記事、
“被災地へ、温かい波を〔心のサプリ 大地震によせて〕”で書かれていることは、
私たちひとりひとりが、すぐに簡単にできることであり、
それが波となって広がっていけば、とても大きな力を生み出すと思います。