東京藝術大学を卒業して間もない新進気鋭の作曲家
小岩悦也さんによるオペラ「商売上手」の初演が、
横浜市開港記念会館講堂で行われた。
横浜市開港記念会館は、国の重要文化財。
レンガ造りの美しい建物は、明治42(1909)年に、
横浜開港50周年を記念して建設された。
時計塔は「ジャックの塔」と呼ばれ、
横浜三塔のひとつとして親しまれている。
鮮やかな色彩のステンドグラスが、有名であるようだが、
舞台をぐるりと囲むように、白い壁に施された
金色のレリーフが、とても豪華だ。
壁時計の周囲や天井のレリーフも、
優雅な雰囲気を醸し出している。
場所柄か、客席には外国人ファミリーも
ちらほら見受けられる。
オペラ「商売上手」は、横浜室内歌劇合奏団の
定期チャリティーコンサートの後半に上演された。
台本は、この合奏団を主宰するフルーティスト、
佐藤大祐さん自らの手によるものだ。
登場人物は、メゾ・ソプラノとバリトンのふたり。
(犬も登場するが、「人物」ではないこととして・・・。)
たくさん笑って、楽しいひとときを過ごした。
明るく軽快な序曲で、オペラは始まる。
途中、華やかなヴァイオリン・ソロ。
これから始まる物語に、期待が膨らむ。
序曲の後、はずむようなワルツとなり、
天才骨董屋(バリトン)登場。
100円ショップで買った壷を、高く売りつけようという、
とんでもないサギ師だ。
「わたし〜は、てんさ〜い、こっとうや〜♪ 」
「ア〜ホ〜な、やつら〜が、みんな〜かう〜、
おかげ〜で、しょうば〜い、は〜んじょうだ〜♪ 」
骨董屋は、演奏している合奏団のメンバーたちに、
いたずらで帽子をかぶせて回り、おおはしゃぎしたり、
バッハ調の節回しで、気取って歌ってみたり。
そして、今日のカモの家へ。
カモにされたお客(メゾ・ソプラノ)は、壷を見て大喜び。
「わたし〜は、こんな〜の、さがし〜てた〜♪ 」
うっとりとした音楽が、気分を盛り上げる。
「さて、これはおいくらかしら? 」
「こ、これは・・・」
急に、緊張感高まる音楽に。
骨董屋は、最初、言葉を詰まらせていたものの、
「100万円です! 」
「これが〜〜〜?! 」
さあ、お気の毒な女性客は、どうなってしまうのでしょう・・・。
この続きは、このオペラの再演の時まで、お楽しみに。
「ア〜ホ〜を、だまし〜て、おおもうけ〜、
か〜ち〜の、わから〜ぬ、も〜のどもに〜、
ゴ〜ミ〜を、うりつ〜け、ひゃ〜くまんえ〜ん、
なんと、すてき〜な、しょうばいだ〜♪ 」
「し〜めしめ、し〜めしめ、し〜めしめ、し〜めしめ、
なんと、すてき〜な、しょうばいだ〜♪ 」
いい気になった骨董屋は、ステージから降りて客席へ。
たまたま前方通路側に座っていた私は、
次のカモにされたのか(笑)、
ありがたくも、骨董屋さんの名刺をいただいてしまいました。
ぐるりと客席を歌い巡りながら、
聴衆に名刺を配り回り、
狂喜乱舞する、自称天才骨董屋。
けれどもその後、どんでん返しが続き、
まさかの結末に!
(再演を期待しましょう)
ユーモアいっぱい、日常も吹っ飛ぶ楽しいオペラでした。
帰り道、私の頭の中でこだましたのは、
「し〜めしめ、し〜めしめ、し〜めしめ、し〜めしめ♪ 」・・・。
夢に出てきそうです。