藝大インプロ研 -佐藤允彦先生プロデュース-

藝大インプロヴィゼーション(即興演奏)研究会のライヴが、
新宿Pit innで行われた。
ピアノ、サックス、鍵盤ハーモニカ(ピアニカ)、
ヴァイオリン、シンセサイザー
5人の若き音楽家たちが、
感性のままに音を発し、交錯させる。
ある時はバッハ、またある時は日本の民謡風のフレーズ、
あるいは五・七・五の俳句のリズム。
モチーフがある楽器で奏でられると、
他の楽器たちが次々と応答していく。
互いの呼吸を感じ合いながら、
一期一会の響きを作り出していく。
紡ぎ出される音、音、音。
ピアノとヴォイスを担当した鎌田さんが、
即興について話したこと。
「今までは譜面通りに弾いていたけれど、
 こんなに面白いことがあったのか、と思う。
 破れ目から本当の自分が出てくる。
 自分の破れ目を、もっともっと広げたい」。
指導の佐藤允彦先生は、昨年、藝大に招かれた。
学生に即興演奏を学ばせようというのは、
佐藤先生の提案だそうだ。
インプロヴィゼーション研究会には、
当初20名くらいの学生がいたが、
今回のライヴに出演しているのは、
その生き残り(精鋭)5名なのだそうだ。
佐藤先生に、即興を学ぶ意義について、
お話を伺った。
「どう表現していくか、という時、
 インプロヴィゼーションが役に立つだろう。
 楽譜には40%ぐらいしか書けないので…。
 室内楽をする時、オーケストラと合わせる時にも、
 インプロヴィゼーションの経験があれば、
 だいぶ違うだろう」。
佐藤先生は、藝大に来る時、
学生たちは皆ガチガチかと思ったが、
それは嬉しい誤算だったそうだ。
「こんなことができるんだ!」
と、喜んだとのこと。
今後、学生に望むものは、即応能力。
そして、ノン・イディオマティック・インプロヴィゼーション
何かのイディオムとか、枠にはまらない、
どういうものにでも対応できる、インプロヴィゼーションのことだ。
また、非平均律の楽器の演奏家とセッションをしたり、
音楽をやったことのない人や、精神を病んでいる人とも、
音でコミュニケーションを取る経験をしてほしい、とのことだ。
学部3年、藤井杏子さんのヴァイオリンと、佐藤先生のピアノで、
パガニーニの難曲、「24のカプリース、第24番」。
もともとは、無伴奏ヴァイオリンのための曲だ。
杏子さんがキリリと演奏を開始。
研ぎ澄まされた音が響く。
そこへ佐藤先生が、包み込むようにジャズの語法でコードを弾くと、
空気が一変。
佐藤先生の演奏は、どんどん自由度を高めていく。
何という存在感!
負けじと挑む杏子さん。
佐藤先生の言葉、
「フリーのインプロヴィゼーションは、
 アカデミズムから最も遠く、面白い」。
二人の演奏から、爆発するようなエネルギーを感じた。

出演
佐藤允彦先生
大石俊太郎さん
上野紘史さん
鎌田恵梨華さん
福本茉莉さん
藤井杏子さん

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藤井杏子さん(ヴァイオリン)出演の動画、"Green Garden"と、"Green Road"を
2011年4月19日の記事、「第11回 試聴コーナー」で、どうぞお楽しみください!

また、当ブログ2010年2月19日の記事、
若き音楽家、宇野健太君、中村翔太郎君、藤井杏子さんの座談会!
も、ぜひご覧ください。