横山幸雄さん Voyage 第3回 「前奏曲を巡る3人の作曲家達」

ピアニストの横山幸雄さんが、小学校3年生まで住んだ三鷹市
演奏会会場となった三鷹市芸術文化センターの辺りは、
横山少年の遊び場だったという。
三鷹だけでしか聴けない」というプログラムが魅力の、
ピアノ・リサイタル・シリーズ”Voyage”を初めて聴いた。
“Voyage (ヴォヤージュ)”の副題は、
ショパンからラフマニノフを結ぶ音楽の旅路」。
この「第3回」では、ショパンと同様に前奏曲集を書いた
フランスのドビュッシー(1862〜1918、今年2012年が生誕150年)、
ロシアのスクリャービン(1872〜1915)と
ラフマニノフ(1873〜1943)が取り上げられた。
今回のプログラムは、横山さんの普段の演奏会では、
めったにお目にかかれない曲ばかり。
特にスクリャービン前奏曲については、
この日のために準備したとのこと。
それを横山さんはユーモアを交えて話し、
会場の笑いを誘っていた。
演奏会の前半では、ドビュッシー前奏曲集第2巻(全12曲)、
後半では、スクリャービン前奏曲集Op.11より6曲と、
ラフマニノフ前奏曲が6曲(Op.23より3曲、Op.32より3曲)。
ちなみに、1歳違いのスクリャービンラフマニノフは、
モスクワ音楽院の同級生。
ピアノ科の卒業試験では、ラフマニノフが1位、
スクリャービンが2位だったそうだ。
ドビュッシーに比べると、
スクリャービンラフマニノフの方が後の世代なのだが、
ドビュッシーの作品は晩年の1910〜13年に作曲され、
一方、スクリャービンラフマニノフの作品は
比較的若い頃に作曲されたためか、
(スクリャービンの作品は主に1895〜96年、
ラフマニノフの作品はOp.23が1901〜03年、Op.32は1910年)、
作曲家たちの生きた時代というものと、
聴いた作品のイメージが、逆転しているように感じられた。
そして、スクリャービンラフマニノフはロシア人であり、
後にそれぞれ独自の作風を確立していくのだが、
この時期においては、二人ともショパンの影響を大きく受けているのが、
ありありと感じられた。
どの曲も、演奏に非常に高度なテクニックが必要とされており、
横山さんの繊細な、そしてまた豪快な演奏を、充分堪能することができた。
このVoyageシリーズは、三鷹市芸術文化センターが
開館20周年となる2015年まで継続され、
今後も、2013年にラフマニノフ(生誕140年、没後70年)、
2014年にフォーレ(没後90年、翌年に生誕170年)、
2015年にラヴェル(生誕150年)の特集が企画されるとのこと、
今から楽しみでわくわくする。